襟裳岬。(えりも岬) 僕はその日、北海道の背骨に立っていた。
岬の先から沖に向け、点々と岩が並ぶ。 沖合いへ、一直線に7kmも続く。 波に洗われ、見え隠れする。 振り返ると日高(ひだか)の山並み。 山脈が海に行き着き、海の底に続いている。
ここは、海と山が行き会う場所だ。 この岬も、長い年月をかけて形作られた。 けして、のんびりとした風景ではない。 陸と海が、今でもせめぎあっている。
風が強い。波も荒い。 この地を守る人達もまた、自然と立ち向かう。
山地の裾野に、青々とした放牧地が広がる。 茶色の肌の牛が、あちこちで草をはむ。 それに混じり、エゾシカの群れも見える。 人の営みと自然の行き会いも、ここの風景だ。
かつて、この牧草地は砂漠化した荒野だった。 森林伐採、放牧が土地を荒らした。 土砂が海に流れ込み、漁業も被害を受けた。 人が、自然との調和を間違えた時代があった。
しかし、人はこの土地を捨てなかった。 砂地に海藻を撒き、草の種を撒き、木を植える。 強い風、砂嵐の中、あきらめることなく。 失敗もあり、前進もあった。 緑地化完了まで、40数年がかかった。 (この経緯は、NHKの番組にもなりました。 機会があったら、ご覧下さい。)
やがて海がよみがえり、丘が生まれ変わった。 この土地で老いる人、また守り続ける人。 世代が変わって、新しい調和の時代になった。
ここを訪れたら、味わって頂きたいものがある。
えりも短角牛だ。
「自然」の草と、この風景で大事に育てられた牛。 人の手で守られた自然の中で、また慈しまれた。 肉本来のしっかりとした味わい。 赤味の滋養を噛みしめる。 それはまた、負けなかった人達の骨太な味。 それを体験して頂きたい。
人が間違えなければ、人が省みれば、 自然は確かな恵みを与えてくれる。 ただし、自然の移ろいに対して、人の一生は短い。 だから伝え、守ることが大切なのか。 それを、歴史と呼ぶのだろう。
※えりも短角牛のお話は、その道の方が詳しい。 リンクでHPを紹介します。 僕が味わったことが、言い尽くされています。 是非、御一読下さい。
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