「しまねこ家用語集」から抜粋
ドツボ
家の中にある、夫専用の収納スペース。 「スベッた」状態で、しまわれる場合が多い。 最近、とみに入り口が広くなった。
僕は、普段の帰宅が遅く、9時ぐらいが多い。 朝は7時に家を出る。 だから、コミュニケーションの時間は多くない。
住居はかなり狭い。 新婚時代、とりあえず入居のつもりの家に、 子供がいないまま、ずーっと暮らしている。 物が順調に増えていくのだけは世間並み。 概ね1m以内の距離を保つ「密着型夫婦」だ。 だが、この距離は危険でもある。 相手の仕草や言動から目をそらすことがない。 逆に言えば、思わぬ独り言もリアルにばれる。 物理的な衝撃も、常時「射程圏内」ということ。 まぁ、普段は仲良くテレビなんぞを見てるけど。
雪国の冬で、家にこもりがちでもビデオはある。 近頃の休日は、一週間分の番組を二人で観る。 普段のストレスから開放され、僕も気分がいい。 油断し過ぎて、スベらなければの話だが・・・・・
「ガリレオ」の録画を観ていたときだ。 思わず、福山雅冶の真似をやってしまった。
全然受けない。
しかし、無視もしてくれない。 70cmの距離から「言葉責め」にあう。
「あのねぇ、無理無理、顔が濃過ぎるし、 今のはスベッタは、本当に。 ほかでやったらダメよ、特に知り合いには。 はっきり言うけど・・・・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから分かった?」
要は、キャラが違うから「止めておけ」とのこと。 確かに顔は濃い。 体型も立派に「外国人離れ」だし。 なで肩で似合う服も少ないし、 順調にオヤジ化してるし・・・・・ 言い返せる状況ではなかった。
今まで受けたのは、美輪明宏の真似だけ。 「オッホッホッ、面白いお方ね」ってやつだけ。 美輪さんだけが似合うのもギモンだけどなぁ。 美輪さんにキャラが似てるのは困るしなぁ。 そんな事を思った。
しかし、一時間後にまたやってしまった。
しばらくして、松田翔太の番組を観始めた。 観忘れていた「ライアーゲーム」だった。 サブキャラの、「レロニラ」の真似が受けた。 白い仮面の、ちょっと気味の悪いやつ。 ここで調子に乗ったのがまずかった。
無謀にも、松田翔太の真似をしてしまった。
妻、無言でビデオを止めた。
子供をさとすように、分からせるように言った。
「やめなさい!」
声は大きかったが・・・
だがその時、僕には勇気があり過ぎた。 美輪明宏さんの黄色い髪の毛が浮かんだ。 ドツボの口が開く音に気付かなかった。 思わず、馬鹿なことを口走ってしまった。
「どうせイケメンじゃないんだから、 フェミニンになってやる!」
妻、無言でビデオを再生し始めた。
もはや目も合わせなかった。
70cmの距離。 沈黙が長い、深い、冷たい。 ボソッと言われた。
「大人しくしててね。」
はい。分かりました。
で、今日聞いておきたい事があるんですが。 4日前のサバ、中国産じゃないよね、きっと。 信じてますから。 |