「しまねこ家会話集」 夜のお約束
妻から夫へのお願い 「大きな声はダメよ」
夫から妻へのお願い 「激しいのはダメだよ、今夜も」
前に申し上げたとおり、我が家は狭い。 ベットはセミダブルが一つのみ。 二人の距離は、限りなく近い。
で、僕はと言うと・・・・・
寝言で叫ぶ。
とにかく叫ぶ。 仕事上のストレス犯の名前を連呼する。 おかげで、妻は知らぬうちに同僚を覚える。 それだけじゃない。
「いいかぁ、この靴に顔を突っ込むんだぁ!」
自分でも意味不明。 妻、真剣に労働環境を心配していた。
それで妻はと言うと・・・・
恐ろしく寝相が悪い。
と言うより、プロレスのリングかも知れない。 レフリー不在、試合も一方的だが。 絶叫と大暴れな二人。 ある意味、ポルターガイストな夜となる。
新婚当初、妻がベットから半分落ちかけた。 「落ちる〜!」と言いながら、まだ夢の中。 ギリギリのはみ出し方で、仰向けにジタバタ。 不覚にも、面白くて見とれてしまった。 裏返ったクワガタ虫みたいだった。
しかし、面白がった僕に、「罰」が待っていた。
その数週間後、妻のうなる声で目が覚めた。
瞬間、アゴに強烈なパンチが一発。
気絶寸前。 立ってたら、ヒザから落ちたな、あれは。
「痛〜い。手が痛ぁ〜い」
妻、自分が何をしたのか分かっていない。
「もしかして、殴った?」
「何、寝ぼけてんの! 痛いのは僕でしょう」
「夢みてたんだわ・・・・・」
「へっ?」 「ドロボウと闘ってたのよ、家の中で」
はぁ〜? 普通、闘う?
確かに僕、カールおじさんみたいなヒゲだけど。 「次は逃げてね」としか言えないわな、こりゃ。 ま、この日は怒る訳にもいかなかった。 当人、「私は家を守った」と言い張ってたし。
しかし、まだ続編があった。 2週間後ぐらい、また妻がうなっていた。 それも普通ではなかった。 心配になった僕に「学習能力」は消えていた。 「大丈夫?」とのぞきこんだ瞬間、
渾身のアッパーカットがアゴに!
倒れこんだよ、全く。
「あっ、ご免、また夢見てた」
「またドロボウかい! 本当に」
「ううん、ハスキー犬と闘ってた」
怒るわけにはいきませんわな。 無意識なんだし。 クワガタ虫状態を楽しんだ報いなんだ。 そう、思うしかないわな。
結婚生活での唯一の家庭内暴力。 それは、僕のTKO負けだった。
だが、最近、心配なことがある。 妻がある朝こう言った。
「ゆうべね、ライダーキックする夢見た」
これが予知夢ではありませんように。 もう一度ぐらいなら、単身赴任もいいかな。 |